<< 真山仁ツイッター採録【2011/05/02~08】 | main | 【お詫び】全量買い取りについて大きなミスをしてしまいました! >>

地熱は、なぜ無視され続けるのか

 菅総理辞任の条件だった「全量買い取り法案」が可決されるようだ。福島原発以降、電力源の可能性を広げるという点では意味のあることなのかも知れない。しかし、不安定で少量である電力源をどう集約し、有効な電力として利用するかの仕組みがない状況で、利用者=国民の負担が高くなるであろう電力の買い取りという法律は、画餅に終わる可能性がある。後継政権が性根を据えてエネルギー政策に取り組むことに期待したい。

 

 ただ、“3.11”での福島原発事故以降にわかにかまびすしくなった原発のあり方と自然エネルギーの議論の中で、私自身はずっと違和感を抱いている。

何よりも、今回“強制的に”買い取られる再生可能エネルギーによる電力は、原発の代替エネルギーにならない。にもかかわらず、マスコミのみならずエネルギー関係者までもが、「再生可能エネルギーこそが、脱原発を推進する」と主張している。だが、話はそんな単純ではない。なぜならば、原発の代替発電の必須は、24時間、相当量の電力を安定して供給する(ベースロードと呼ばれている)発電でなければならないからだ。

 しかし、再生可能エネルギーとして期待があつまる風力発電も太陽光発電も、24時間どころか、8時間分の発電すらおぼつかない。その上、発電施設一基での発電量は微々たるもの(但し、一般家庭をまかなう発想なら、それなりの効果はあろう)だ。

 

 したがって、全量買い取り法案が成立したら脱原発が実現すると考えるのは大きな勘違いだ。無論、充電技術が進んだり、微風でもしっかりとした発電が可能になったり、電灯の明かり程度でも発電できるような太陽光発電というような技術革新が進めば話は違う。しかし、現状では風力も太陽光も原発の代替エネルギーにはなりえない。ただ、私自身はエネルギーを地産地消すべきだと考えているので、地方自治体ごとで風力や太陽光によって電力を自給自足する仕組みを作り上げるプロジェクトには期待したい。

 

 しかし、製造業が日本経済を支えており、その上、都会での暮らしには、24時間大量かつ安定した電力が不可欠だ。高層マンションでの暮らしも、通勤通学のアクセスである電車も出張のための新幹線にも大量の電力が必要だ。さらに、オフィスやショッピングセンターでも大量の電力を消費する。こうした需要に対する発電方法を考える場合、再生可能エネルギーが“主役”なる時は遙か先のことではないだろうか。

 

 ただ、今回の全量買い取り法案でも外され、再生可能エネルギーにも指定されていないが、原発の代替エネルギーとなりうる自然エネルギーがある。

地熱発電である。

ご存じのように地球の中心は溶岩よりも高温の核というエネルギー源がある。火山が噴火したり地震が起きるのも、その核によって地球が“生きている”ためだ。そのため、地面を掘り下げていくと地中温度は上昇していく。その岩盤の下に火山帯があったりすれば、より高温になる。地熱発電は、地中に所々できる地下水の溜まりが、マグマなどによって熱せられた熱水溜まりを利用して行う発電方法だ。地面を掘り下げていくと、圧力も高くなるため、熱水は摂氏260度でもお湯の状態を保っている。そこに地上から配管を通して通気口を作ると、高温の熱水が一気に吹き上がる。その蒸気を利用してタービンを回すのが地熱発電だ。簡単に言えば、温泉の仕組みを思い出してもらえばいい。温泉も地中深くにある熱水溜まりを探してそれを地上に吹き上げさせて利用する。地熱発電の場合は、より高温の熱水を利用してタービンを回すだけだ。

 日本全国には、東北と九州を中心に17カ所(53万キロワット)の地熱発電がある。全基を合わせても、小さな原発一基分だが、2010年段階で世界第8位の発電量を誇っている。また、地熱に関する技術の大半は日本が世界をリードしている。

 地熱の魅力は、何より資源コストが掛からない点だ。エネルギー自給率4%と言われているエネルギー資源のない国と知られる日本には、実は足下に無尽蔵と言えるエネルギー源が眠っていたのだ。火山大国日本ならではの恵みなのだ。

2011年に環境省が行ったポテンシャル調査では、理論的埋蔵量である「賦存量」は設備量にして約3300kWと見積もられた。原発の代替エネルギーとなりうる発電量だ。しかも、地熱発電は利用した蒸気を再び地中の熱水溜まりに戻し“再生”している。ただ、一部が空気中に放出されているために、国は「再生可能エネルギー」としなかったのだ。そこには多分に政治的な意味合いがあるのだが、そこは敢えて記さない。

重要なのは、原発の唯一の代替エネルギーである地熱発電が、ずっと無視されて続けている点だ。私は、2007年に『マグマ』という小説で地熱発電を取り上げた。そこに功罪を詳しく記したが、無視され続けた理由として、エネルギー業界で囁かれてた噂がある。「自然エネルギーで、地熱だけがベースロードになりうる。つまり、原発の代替エネルギーになりうるために封殺されたのだ」真偽の程は定かではない。だが、地熱の過去と現在を調べた限り、私自身は可能性としてあり得ると考えている。

 

地熱発電が拡大できない壁が二つあると言われている。1つは、地熱発電の有力スポットの大半が国立公園内にあるためだ。火山帯が作り上げる雄大な風景は日本特有の風景のためだろう。もう1つは、温泉組合の反対だ。

この国立公園問題には、1970年代に当時の通産省と環境庁の覚書が影響していると言われている。地熱を開発した当初、特例的に国立公園内での開発を認めたのだが、杜撰な工事などで自然を破壊したため、これ以上の開発は行わないと覚え書きが交わされたのだという。だが、温暖化対策や“原発に依存しない社会”を本気で目指すなら、この覚書は破棄すべきだ。なお、私が『マグマ』を著すために取材した際ですら、「温暖化対策もあるので、環境省は覚書については破棄することも検討しているようだ」という話も聞いたことがある。ただ、新規の開発者が現れなかったために、議論にならないのだという。

国立公園の問題については、公園の規制の最も緩いエリアを開放することで解決できる。自然保護は重要であるため建設には細心の注意は必要だが、本当に脱原発を目指すのであれば、一考すべきだ。

また今年、国立公園の外部に発電所を設け、斜めに配管を通して国立公園内の地中から熱源を取る地熱発電の開発も始まった。

 

 

 一方の温泉組合との問題は、地熱によって温泉が枯渇するという抗議があるためだが、実際には異なる熱水を利用すれば、既存の温泉に迷惑をかけることはない。ただ、まさかを考えて温泉組合が必ず開発に異を唱えているが、『3.11』が起きた後も、そのようなスタンスでいいものかを問うてみたい。

 

 

 東日本大震災と福島第一原発事故を経験したことで、私たちは震災以前の常識を再考すべき時期に来ている。エネルギー問題もまたしかりだ。原発を今すぐなくすことは難しいが、原発に依存しない社会を求めていない国民はいないだろう。であるならば、明確に原発の代替エネルギーの議論をすべきなのだ。にもかかわらず、政府もマスコミも全量買い取り法で、原発の代替エネルギー対策が進んだというミスリードを続けている。

 

 はっきりと申し上げる。もし、本当に風力や太陽光発電ばかりを推し進めていけば、結局「そんな不安定な電力では、日本の産業も社会も立ちゆかない。だから原発推進」という答えが出てしまうだろう。

 今こそ、地熱発電の必要性を真剣に考えてほしい。

 


スポンサーサイト

  • 2017.05.04 Thursday
  • -
  • 14:39
  • -
  • -
  • by スポンサードリンク

コメント
地熱発電は妄想なんかじゃない。
そんなことを言っているから、我が国はガラパゴス化するのだ。
発電コストも太陽光発電などに比較すれば遙かに安く、経済的である。
ベース電源となるほど、安定的に発電できる。
地熱の1000kWは、7000kWの太陽光発電メガソーラーと同じくらいの電気を生産できるし、安定電源ということで、実際には太陽光発電の30倍以上の価値がある。
温泉で利用している熱源と地熱発電で利用する地下貯留槽は深さが全く異なる。
国産のエネルギー比率が増すことの意義を真剣に考える必要がある。電気代の大半を石油や石炭の輸出国へ払うのと、FIT制度で、国内の地熱開発に払うのとどちらがいいのか?

  • miya
  • 2012/06/08 9:06 AM
地熱発電 大賛成です。

福島原発事故でで失ったものはあまりに大きく 地震国の日本に原発がなくならない限り、
暮らしが根こそぎ奪われる不安は消えることはありません。

世界最大級の地熱資源量を有している わが国が
国民的議論もせず なぜ地熱発電を無視するのか さっぱりわかりません。
やはり 原発利権がなくなるからですかね。

大和総研ホールディングス のコラム 2011.06.21
.http://www.dir.co.jp/publicity/column/110621.html
ポテンシャルが非常に高い日本の地熱発電というのを読みましたが
こういうことを なぜ新聞やテレビが取り上げないのか 不思議で仕方がありません。

地熱発電の議論を 1時間くらいテレビでやってほしい。
必要性を考える人が絶対増えると思います。

純国産エネルギーの地熱  
ほかの国はなぜ日本がやらないのか不思議に思っていることでしょ。

  • しらき
  • 2011/08/24 9:15 PM
いきなり関係のないことでコメントさせていただきます。すみません。

真山さん、ハゲタカの続編はもうないのでしょうか?
こんな時代だからこそ、ハゲタカの続編を読みたくなったりもします。

失礼極まりないコメント、申し訳ないです。
  • ファン
  • 2011/08/20 12:40 AM
地熱のデメリットは開発コストです。国立公園の規制もありますが、地熱発電所までの道路整備、山岳悪路への資材搬入、巨大資本がなければ出来ません。また、自然を相手に熱を得る難しさは相当なものです。地熱は生き物ですので維持管理もかなり大変です。風力や太陽光と同等のレベルで考慮するのが大変です。
  • 前場幸一
  • 2011/08/13 7:49 PM
地熱発電へのご支援有難うございます。
1点気になりました。「今回の全量買い取り法案でも外され、再生可能エネルギーにも指定されていない」と書かれていますが、地熱発電は外されていません。新エネ法から外されましたが、一昨年の新エネ委員会で地熱と小水力が再エネとして定義され、今度の再エネ法案ではバイナリーに限らず地熱発電全般が買い取り対象となりました。但し、新規開発に限ります。
  • 安達正畝
  • 2011/08/13 1:59 PM
住民無視の妄想論ですな
現場を知らないなんちゃって学者にありがち
  • 身勝手
  • 2011/08/13 12:16 PM
地熱のデメリットとして地震を引き起こす可能性があります。必ず起こるわけではありませんが、岩盤熱床を冷やすことによる地震の可能性も否定できません。そうした中で地熱発電を推し進めるのは地元住民の理解を得るのは非常に難しいです。
  • 真実はそこに
  • 2011/08/13 12:53 AM
地熱が一番コストが高いからと聞きました。
本当かはわかりませんけど。
  • kai
  • 2011/08/12 8:38 PM
コメントする









この記事のトラックバックURL
トラックバック
calendar
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031   
<< May 2017 >>
sponsored links
selected entries
categories
archives
recent comment
recent trackback
links
profile
search this site.
others
mobile
qrcode
powered
無料ブログ作成サービス JUGEM