<< 奇しくも重なった「原発」、…『ベイジン』文庫化など | main | ジャーナリストよ! >>

スポンサーサイト

  • 2018.01.18 Thursday
  • -
  • -
  • -
  • by スポンサードリンク

一定期間更新がないため広告を表示しています


ランキン復活!?『死者の名を読み上げよ』



 私が敬愛して止まないスコットランドの作家イアン・ランキンの新作『死者の名を読み上げよ』は、期待に違わぬ傑作だった。
 エジンバラを舞台にしたランキン作品の魅力は、まるでその街の空のようにダークに沈んだモノトーンの中で、公私に問題を抱える主人公ジョン・リーバスという破滅型の警部の生き様だ。とにかく不器用で頑迷。終始人生と社会の崖っぷちをフラフラしながら、ただ一点完全無欠な正義のみで生きながらえている。英国現代ミステリの伝統である警察官を主人公にしたシリーズではあるが、限りなくハードボイルドの薫りが強い。

 98年に代表作である『黒と青』(ハヤカワポケットミステリ)が刊行されて以来、ずっと私にとって“特別な存在”だった。日本で刊行された作品(おそらく12冊)を読破するほど私が惹かれる理由は、作品の漂う灰色の世界感と現代社会の暗部を鋭利な刃物で描く鋭さと深さにある。そして、余りにも生臭い武骨男リーバスの人間くささ。それ以前から、ハマっている他の英国作家(P.D.ジェイムズやレジナルド・ヒルなど)とは明らかに志向を異にしながら、それと同時にやはり伝統的な英国ミステリの王道をしっかりと抑えているところだ。

 とは言うもの、この数作、どこに行ってしまうのだろうかと心配になるほどのどん底を、リーバスはのたうち回っていた。また、初期の作品と比べて徐々にミステリ色が色褪せ、文学的志向も感じていた。
 それはそれで魅力的ではあるのだが、読む側に精神的な余裕と健全性がないと本が開けないという覚悟が必要になっていた。

 だが、しかしである。今回の作品で、ランキンは何か突き抜けたようだ。
 リーバスは遂に奈落の底から這い上がり、久々に刑事として猛進を始める。何より作品のスケール感が違う。過去にも社会的な要素を取り入れては来たが、今回は実際にエジンバラで開催されたG8を見事に虚構の中に織り込み、今までにない政治的なメッセージもたっぷりと混ぜた。
 何より凄いのが、社会的発言のための小説ではなく、徹底した娯楽性を追求し、ミステリとしても最高級の仕掛けを随所に張り巡らせながら、明らかに現代の国際政治が孕んだ矛盾を糾弾するという“離れ業”をやってのけている点だ。

 出世作『黒と青』を超えた――。私はそう感じた。
 1960年生まれのランキンは、20代後半から作家デビューを果たし、既に“重鎮”の域に達している。しかし、それに甘んじることなく小説家としての使命と進化を続ける姿勢に、ただただ感服するばかりだ。
  

スポンサーサイト

  • 2018.01.18 Thursday
  • -
  • 11:13
  • -
  • -
  • by スポンサードリンク

コメント
コメントする









この記事のトラックバックURL
トラックバック
calendar
    123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930 
<< November 2018 >>
sponsored links
selected entries
categories
archives
recent comment
recent trackback
links
profile
search this site.
others
mobile
qrcode
powered
無料ブログ作成サービス JUGEM