<< 「ハゲタカ」外伝:バブル時代の飯島vs芝野の物語! | main | 初の短編集『プライド』刊行! >>

スポンサーサイト

  • 2018.01.18 Thursday
  • -
  • -
  • -
  • by スポンサードリンク

一定期間更新がないため広告を表示しています


新作準備を前に〜今、お奨めしたい3作品

JUGEMテーマ:読書


すっかりブログの更新をサボっていました。
何か書かねばと思いながら、今年は日々の原稿で窒息しそうで、年の瀬を迎えてしまいました。

そんな中、ある事情で掲載を見送った「今、私がお奨めする3作品」を“復活”させたいと、思い久々に更新します。
紹介する3作品は、今年9月に「文藝春秋」の依頼で訪れた東欧取材から、私の中で確信となった“ある転機”を決定づける作品でもあります。

そして、年明けの2月からスタートする新連載、さらには春頃に刊行予定の2本の新作を含めて、私の大転換(本質的には変わっていませんが、作品のテーマ的には変わったと思われるだろうと思います)の方向性を指し示すものでもあります。


 私の読書傾向は、かなり偏っているかも知れません。大好きな小説家の新作は欠かさず読む以外、社会をどう見るべきなのかという刺激を求めて手に取る場合が多い気がします。私自身が執筆に当たり、「常識を疑え」という思いを大切にしているためでもあります。
 小説とはワクワクドキドキする時間を楽しむと同時に、こういう考え方、生き方があるのかという人間の本質への探訪でもある――。そんな作品づくりを目指すために、最近刺激を受けた三作をご紹介します。
 まずジョージ・オーウェル『1984年』です。これは世界が三分割され、そこで築き上げられた管理社会の中で人々が生きるという近未来小説です。1949年に発表された作品ですが、当時のソ連の独裁制の恐怖を描いた作品として、大きな衝撃を与えたと言われています。
 幸運にも、一九八四年は、無事に過ぎました。ところが本書で描かれた社会は、ひたひたと私たちの足下で熟成を続け、二一世紀に入ってその片鱗が姿を見せ始めたのではないか。本書を読み進むにつれて、そんな実感を何度も感じました。
 たとえば本書では、「無知は力である」というスローガンが叫ばれています。国民を思考停止させることができれば、巨大な力はないという意味だと私は感じました。ある意味、高度経済成長を遂げれば人は幸せになれるというスローガンの背景にも、こんな発想があったのではないかと思います。それが二一世紀になり、「カネがあれば幸せになれるはず」という新自由主義となって、さらに磨きがかかりました。一方で、日々他人の不幸と現状肯定を前提としたバラエティばかりを垂れ流すメディアの有り様は、国民を「無知」の状態に止めておく謀略ではないかと私のようなひねくれ者は考えてしまいます。
 哀しいかな、オーウェルが予言した社会は、ゆっくりと確実に完成しつつあるのではないか。本書を読み終えて、そう思わない人はいないのではないでしょうか。
 次におすすめするのは『サラマンダーは炎のなかに』という作品です。英国のスパイ小説の巨匠ジョン・ル・カレの、翻訳されている作品としては最新作です。長らく東西冷戦のはざまで生き抜くスパイたちのドラマを描き続けてきたル・カレは、冷戦終結後、新たなる敵を探す旅を続けていました。その彼が行き着いた一つの結論が、本書で描かれています。
 作品では、ベルリンの壁が登場した60年代に物語が始まり、二人の男の友情を軸に50年間の世界の激動が描かれています。「東西」という、ふたつの対立軸が拮抗する世界が終焉した次に、まん延したのは、新自由主義という欲望の権化でした。物語の中でル・カレは「自分の行動こそが世界を正しい方向へ導く」という信念を互いに譲らない男たちの葛藤を描きながら、欲望と金が世界をねじ伏せ、そして捻じ曲げていくことの恐ろしさを、熱い人間ドラマを織り込みながら繰り広げていきます。
 本書を読むと、現代社会が明らかにオーウェルの『1984年』そのままの管理社会へと変貌しつつあるのではという危惧が募ります。
 モラルも誇りもかなぐり捨てて欲望の充足だけに耽溺する人間は、その一方で思考停止という陥穽にはまる。そしてその先に待っているのは、システムという見えざる独裁者による恐怖社会かも知れない……。
 最後に、国家に隷従させられることの恐ろしさ、あるいは『1984年』的恐怖を生々しく伝えるノンフィクションを紹介しましょう『ロシアン・ダイアリー』です。著者のアンナ・ポリトコフスカヤは、着実に権力を掌握したプーチン大統領(現首相)が説く国家資本主義に対して警告し続け、自宅のエレベータで暗殺されてしまう悲劇の人です。
 為政者が流す情報に疑いの目を持ち続け、考え続けることでしか、自由は守れない。彼女は命を賭けて、大切な真理を伝えてくれるのです。
 さて、手前味噌ですが、2010年2月から「別冊文藝春秋」で新連載を始めます。上記の三作品から受けた刺激を素に、現代社会が『1984年』的管理社会から逃れるためになすべきことは何なのかを、拙いながら考えてみたいと思っています。
 
 


スポンサーサイト

  • 2018.01.18 Thursday
  • -
  • 15:54
  • -
  • -
  • by スポンサードリンク

コメント
初コメです。
新作楽しみです♪
ハゲタカシリーズは作者出身の大学っていう紙と共に生協に置いてあります。
  • エリア
  • 2009/12/23 11:02 PM
コメントする









この記事のトラックバックURL
トラックバック
calendar
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031   
<< October 2018 >>
sponsored links
selected entries
categories
archives
recent comment
recent trackback
links
profile
search this site.
others
mobile
qrcode
powered
無料ブログ作成サービス JUGEM