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  • 2016.04.16 Saturday
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『丁庄の夢』の閻連科さんとの邂逅

 『ベイジン2008年』の取材のために、6日(月)〜10日(金)までの間、北京に出かけた。北京五輪1年前の北京の様子と、北京の暑さを体感したかったためだ。

 滞在中、今回の小説を影ながらサポートいただいている翻訳家の泉京鹿さんを通じて、現代中国を代表する小説家・閻連科さんとお会いする機会を得た。
 閻さんは、今年1月に、エイズ村の悲惨さを独特のタッチでファンタジックに描いた『丁庄の夢』(河出書房新社刊)で注目を浴びた方だ。
彼自身も河南省出身で、1つの省だけで100万人ものエイズ感染者を出したと言われる同省の実態を、エイズに感染しながらも必死で生き続ける人々の喜怒哀楽に重きを置いたことで悲劇を際立たせた。
06年に中国で発表されるやいなや大ベストセラーになったが、すぐに政府から発禁処分を受け、現在は中国では入手困難な状態が続いている。彼は前作『人民に奉仕する』(文藝春秋刊)という作品でも発禁処分(こちらは、雑誌の段階で咎められ、結局本にもならなかった)を受けており、数年間で2作もの発禁処分を受けた例は彼だけだという。

 閻さんにお会いしたかった理由は2つある。
1つは、悲惨なエイズの実態(原因は、政府主導の売血運動)を描きながら、敢えて政府を糾弾するという形ではなく、人間の悲しさ愚かさを大人の童話的に描いた彼の小説家としての姿勢について訊ねてみたかったこと。
2つめは、『ベイジン2008年』の主人公の一人を河南省出身にしたため、河南省出身の彼に、そもそもなぜ河南省の人たちは、中国の他の地域から差別を受けるのか。さらに彼らはそれをどんな風に受け止めるのかを伺ってみたかったのだ。

 著者近影を拝見していると厳しそうな方に見えたのだが、お会いしてみると優しい目と柔らかく暖かい手が印象的な方だった。
北京大学にほど近い『無名居』という店で、日本在住で偶然帰国中だった閻さんの親友で詩人の田原さんにも同席戴き、日本語と中国が行き交う中、遅くまで小説談義に花が咲いた。

どちらかというと私が閻さんから河南人事情を聞くという取材のような流れだった。彼に私がなぜ河南人を知りたいのかをお話ししたところ、何でも聞いてくれということで、閻さんは、的確かつ深い部分まで話してくださった。
その成果は、小説に反映させたいと思うのだが、一番驚いたのが、河南人気質というのが、日本人、特に私のような大阪人気質にとても近かったことだ。お上には楯突かない。でも愚痴は多い。卑屈ではあるのだが、魂は売らない……。そういう意味でとても親近感があった。 
その一方で河南で起きたような悲劇は、おそらく大阪では起きなかったろうとも思えた。理由は、大阪人はお上を基本的に信じていないし、商いで生き抜いてきた。人情派は多いが、同時に情に溺れることを戒めてきた。一方の河南は、中国で最も古都の数が多く(洛陽も河南省)お上に従う習慣が染みつき、農業が中心だったことが大きな差を分けたような気がする。

ただ、その河南人気質について閻さんが言った言葉が忘れられなかった。
「河南人にとって一番大切なことは、生き残ること。何があっても自分たちだけは生き残る。それが河南人の矜持」
しかも、その矜持を口にしたり、誇示しない。「心に秘めていればいいのだ」という。
ただ、彼らの悲劇は、サバイバル(生き残る)精神を、弱肉強食というスタイルではなく、唯々諾々とお上の言いつけを聞き、雑草のようにしぶとく生きることに専念したことにあるのではないか。
「不器用といえば、そうだけれど、我々はそんなことも気にしてない」という閻さん。日本では中国屈指の反体制派作家と言われ、ノーベル文学賞候補の一人とも言われるのだが、彼自身は「中央政府の執行能力はもっと高く評価されるべきだし、回りが思っているほどこの国は脆弱じゃない」と反体制派と呼ばれることを由ともしていない当たり、河南人らしいのか。
少なくとも彼がなぜエイズの悲劇を「丁庄の夢」のタッチで描いたのかは、分かった気がした。彼は河南の寒村で何が起きているかを伝えるために最良の方法を選んだのだ。さらに、誰かを糾弾するのではなく、悲惨な状況の中でも人は生きていかなければならないことを訴えたかったのだ。

会食中何度も「自由に小説が書け、多くの人に本を読んでもらえるあなたがうらやましい」と言われた。改めて言論の自由とは何かを考えさせられた。

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